飽き性の頭の中

SFのメタバース vs. 現実世界のメタバース

SFのメタバース vs. 現実世界のメタバース

tawachan
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メタバースという言葉を最近ちらほら聞くようになった気がしている。おそらく、Facebook が社名を Meta に変えるという報道がなされたくらいからであろうか。

自分自身はテレビも見ないし、あまり情報取得の幅が広いわけではないので、一般的な認識がどうなっているのかはよくわからない。しかし、少なくとも、メタバースというと Facebook もとい Meta が注力しているドメインというイメージがかなりある。

VR 空間上で、単にゲームをするだけではなく、現実で一般的に行われていたようなさまざまな行為ができるようになるとすれば、それは社会を大きく変えるだろうし、技術としての可能性は存分に検討するべきであろう。

Meta がどのようなことを目論んで、メタバース・ファーストを掲げるのかは把握してはいないが、何か単一のサービスには留まらない構想があるということは示唆される(参照:Facebook が「Meta」(メタ)に改名。メタバース・ファーストのソーシャル技術企業へ)。

話題騒然となったのかはもはや、主流メディアというものがよくわからなくなった現代においては、いまいち掴みどころがないが、かなり注目されていることは事実であろう。

そんなときに、Meta に明示的に抗する意図があるのかはわからないが、おそらく対立するスタンスを提示している Naiantic の記事が目についた。

Nianctic はいわずとしれた Pokémon GO を開発した企業である。その Niantic は「現実世界のメタバース」を標榜するようである。上記の記事の一部を引用すると、

社会として、SF ヒーローが仮想の世界に逃避するような世界にならないことを願うことも、そうならないように努力することもできます。Niantic は後者を選びます。私たちは、テクノロジーを使って拡張現実の「現実」に寄り添うことができると信じています。私たち自身を含めたすべての人々が立ち上がり、外を歩き、周囲の人々や世界とつながることを奨励します。これは、人間が生まれながらにして行っていることであり、200 万年に及ぶ人類の進化の結果であり、その結果、私たちを最も幸せにしてくれることだと信じるからです。テクノロジーは、人間の基本的な経験をより良くするために使われるべきであり、それらに取って代わるものではありません。

と述べられている。すなわち、VR ゴーグルをかけて仮想空間上で物事を完結させるような世界観ではなく、あくまで現実に主眼が在り、それを補佐する仕方での技術使用を模索するというということであろうか。

VR ではなく AR に注力するというスタンスは、Pokémon GO や最近公開された Pikmin Bloom を見ればわかりやすいであろう。

これが Meta の模索する世界観と対峙するのか自分にはまだ判然とはしていないが、一見するとおそらく方向性はかなり異なるように見える。

これらの対立(?)はもはや思想的な対立ともいえるであろう。すなわち、人々は現実世界を重要な特別なものとして位置づけるのか。それとも、VR 空間も抵抗なく使いこなし、現実世界を置き換えうるようなことがありうるというような。

自分自身がこの対立を見たときに、直観的に Niantic に賛同の念を覚えた。すなわち、自分にはどこか現実というこの物理空間になにか特別な思い入れがあるということなのであろう。現実を重視し、それを無闇に置き換えるということは考えないという、技術に慎重な(悪くいえば保守的?)な態度がなぜか気に入ったのかもしれない。

しかし、自分は政治思想・政治理論と現代の情報技術との関わりに着目して研究をしているが、その際にはアルゴリズムが人間の判断を一部代替する可能性や、人間の義体化・ロボット化という選択肢も技術革新によって現実のものとなるならば、柔軟に検討すべきだという姿勢で研究に取り組んでいるつもりでいた。保守的な感覚・態度というのは、現在スマホが使えこなせない時代遅れな人のようになってしまう第一歩なのではないかと恐れすらあった。

ここにある種の、自分の中での矛盾のようなものを見出したともいえる。すなわち、一個人としては現実世界に重み付けをする一方で、研究するという文脈においてはもう少しラディカルに検討したいという気持ちもあるというものである。こうした一見相容れないような対立した感覚を持ったことが、実際のところ本当に矛盾なのか、はたまた一貫した説明がなされ得るものなのかは、今後詳細に自問するとして、とりあえず Niantic の提示する新たな視点というのが面白いと思ったのである。

Niantic は Pokémon GO のような AR 技術を用いたアプリケーション開発をサポートするツール群を提供することで、この世界観の実現に寄与しようとしているようである(参照:ナイアンティック「現実世界のメタバース」構築のために約 344 億円調達、評価額 1 兆 328 億円に

このあたりの情報は全然終えていないけれど、今後少しずつ意識的に追っていきたいと思ったのである。ぜひ、関連情報や面白い知見を知っている方がいれば教えていただけると幸いである。

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