読書メモ「ネクスト・ブロックチェーン次世代産業創成のエコシステム」
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「ネクスト・ブロックチェーン次世代産業創成のエコシステム」という本を読んだときのメモです。
所有権の設定
新しい資源をうまく利用するためには、まず、所有権を設定することから始める
ノーベル経済学賞受賞者ロナルド・コースのいうように、無価値と思われ、誰も所有権を主張してこなかったサービスに急に価値が発生すると、所有者を定めない限り、市場取引に乗せることができません。
最初に、データの所有権をデータを生み出している個人に戻す必要があります。ブロックチェーンは、データの所有権を低コストで記録していくことを可能にしてくれます。
データの所有権が定まれば、そのデータを売買することで、さまざまな目的で利用できます。そうすることで、はじめて、データが本来もつ価値を実現できるようになるでしょう。
市場の質
市場の質とは、
- 効率性
- 競争上の公平性
の両方を反映する規範的な尺度として定義
効率性:適切な資源が適切な場所に配分され、利用される状態を意味する。
公平性:市場の機能に関する規範的な尺度。
市場の質の命題
- 第一命題:健全な経済成長には、高質な市場が不可欠である
- 第二命題:高質な市場を維持するには、適切な市場インフラが不可欠である
市場の質は上下を繰り返して上がっていくという考え方らしい。
次の 3 つの要素の変動がそれぞれの市場の質の低下と関連しているとか。
- 競争の質
- 情報の質
- 商品の質
競争上の公平性
競争はルールのもとでのみ成立
- 原則1(私有財産権)市場で取引される商品には、譲渡可能な私有権が適用されなければならない
- 原則2(自由意志に基づく行動)市場における取引は、自由意志に基づかなければならない
- 原則3(差別の禁止)誰もがあらゆる相手方と、両者が合意する金額(あるいはより広く、両者が合意する条件)で自由に取引が行える
ブロックチェーンは非効率
ブロックチェーンは効率性を犠牲にして、取引における信頼形成を省くことに成功している。そのために一見して無駄と思えるコストを支払っている。
したがって、安全性や信頼性が損なわれる懸念が効率性を確保する利益を上回る場合だけ、ブロックチェーンの利用を考えてみるべき
分散化(分権化)の価値
分散化の価値とは何か、さらには、分散化を通じて、現在のインターネット上で起きている情報の集中化プロセスを打破し、情報の集積規模を縮小し、集権化の 1 つのメリットである規模の経済性を犠牲にしてすべてを細部まで管理することに本当に価値があるのか、といった問題を考える必要がある
情報技術は取引費用を下げる
情報技術は、社内の取引費用を削減するには大きく貢献
他方で、見ず知らずの主体間の取引では信頼形成にかかる費用が重要で、それを節約するには、情報技術は大きな貢献はできない
そのため、情報技術の発展とともに、大企業と中小企業の格差が拡大してしまった
ブロックチェーンを使った分散型取引市場(DecentralizedExchange,DEX)を利用すれば、外部の取引コストを低下させ、企業が巨大化していく現状を改善できるでしょう
ブロックチェーンの階層でのトークン化
ブロックチェーンの仕組みには階層がある
- 暗号資産層
- あらゆるものをトークン化できる
- ダップス(分散アプリケーション)層
- エコシステムの株式価値を表すようなもの
- プロトコル層
- コインと呼ばれるもの
- チェーン自体の通貨。Ethereum など。
- 機能的には、国家の憲法に似ている。記帳費用は税金みたいなもの。
トークン化の経済効果
暗号資産トークンの発行費用は小さいので、これまでは取引できなかったような低活の非流動資産の多くをトークン化できる → 新しい市場で製品やサービスを生み出すことができるようになる
DEX の課題
- 中央認証機関がないことにより KYC がしきれていない
- ブロックチェーン技術の性能が低い。処理性能が集権型取引の 1/00〜1/1000 くらい
こうしたことにより、DEX にはユーザーメリットがあるはずなのに急速に成長しているわけでもないということらしい