飽き性の頭の中

【ネタバレあり】『ザ・コンサルタント』はアクション映画ではなく、アスペルガーへの偏見を払拭する社会派映画だった

【ネタバレあり】『ザ・コンサルタント』はアクション映画ではなく、アスペルガーへの偏見を払拭する社会派映画だった

tawachan
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少し前ですが、『ザ・コンサルタント』という映画を観てきました。

率直な感想は、想像とまったく違う! !

正直、最初はちょっと味気ないアクション映画だと思ってうたた寝をしていましたが、最後に急展開!自分が完全にこの映画を見誤っていたことに気が付きました

観終わってから映画全体の意味を振り返って、その意味をじっくり考えました。

もう本当にいい意味で予想を裏切ってきました! !

ですので、すべては語りませんが、
裏切られたポイントを少しだけ書いてみたいと思います。

ですが、実際に映画を観てほしいです。それくらい価値があると思います。

『ザ・コンサルタント』はアクション映画?

『ザ・コンサルタント』のトレーラーをテレビや YouTube で観たことありますか?

観たことない人は、ぜひ一度観てください!

どのような印象を持ったでしょうか?

職業は「会計コンサルタント」、
本業は「腕利きの殺し屋」なんてクールすぎませんか?

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天才的なコンサルタントというだけでもかっこいいのに、実はプロの殺し屋だなんて、壮絶なアクションを期待しない訳にはいかない…!

僕は完全にアクション映画だと思って観に行きました。

あれ、アクションがいまいち…?

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という期待とは裏腹に、
映画が始まってみると…あれ? つまんない…!? ってなりました。

中盤からは、「スノーデン」のほうがよかったんじゃ…と後悔を半ばしながら睡魔と戦っていました。

というのも、ストーリー展開が遅いというか、なかなか進まないんです。

体術も銃撃戦も的確でキレがあってかっこいいのですが、なんか迫力にかける感じが否めません。

きっと、
爆弾ボォォォーン! ! ! !
とかがなかったからなのでしょうか。僕は単純ですね。

とにかく中だるみな印象を受けました。

それもそのはず、社会派映画ですから!

ですが、この映画の主題はアクションを魅せることではなかったのではないかと思っています。

実際に見た人でも、「頭脳派でもあり殺し屋でもある主人公が、裏の組織を始末していくクールな映画」という印象の人もいるかもしれません。

僕の深読みかもしれませんが、
それだけでは終わらないメッセージがこの映画にはあると思います!

主人公のクリスチャン・ウルフはアスペルガー

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主人公のクリスチャン・ウルフはアスペルガーです

幼少期からパニックを起こしがちで、物事を最後までやらないと気が済みません。

パズルが超人的に得意で、1000 ピースはゆうに超えるパズルを裏向きで(!)さらっとやってのけてしまいます。1ピースどこかに無くしてしまい、完成しないと思った途端にパニックになってしまう特有の症状も描かれています。

その類まれな能力で、会計士として他の人では膨大な調査を一晩でやってのけ、会計不正を暴いてしまいます。

ですが、かっこいい「コンサルタント/殺し屋」としての顔とは裏腹に、パニックを必死に落ち着けているシーンがあります。どのような意味があるのかはよくわからなかったのですが、夜は家で精神を落ち着ける儀式のようなものをしなければ、パニックになってしまうようです。

こういったアスペルガーの症状を示唆するシーンが随所に織り込まれています

最初はそういうキャラくらいに思っていたのですが、これは最後のメッセージのための伏線だったと思っています。

アスペルガーの他にも、自閉症やサヴァン症候群という言葉を思い浮かべるかもしれませんが、こういう関係性になっているようです。

自閉症  ━┳━━━  アスペルガー症候群
       ┗━━━  サヴァン症候群

※サヴァン症候群の登場人物もいるので、映画の主題としては自閉症一般だと思いますが、今回はアスペルガーのクリスに関してだけなので、アスペルガーと表記します。

アスペルガーと誰も向き合わない

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アスペルガーを始めとする自閉症をもつ子どもたちを診ている施設が出てきます。そこには、何人かの子供が預けられています。

しかし、その子供の親たちは、コミュニケーションが不得手で普通の社会生活が遅れるのかといった心配ばかりしています。

そして、その心配は、「知恵遅れ」は「社会不適合」といった劣位な存在として認識しているところから来ているんだと思います。

主人公クリスの場合、母親(たしか。ウル覚えです)。が心配して医師に相談している最中、「普通」の人には到底できないパズルを安々とこなしています。ですが、誰も気が付きません。

父親だけがクリスに同じ「人」として接した

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アスペルガーというと上にも書いたように、

突然パニックを起こしたり、折り合いをつけたりできません。

学校などではそれが問題視され、劣っているというレッテルを貼られる事になります。

ですが、父親だけはアスペルガーだからといって特別扱いすることはありませんでした

元軍人の父親は、アスペルガーだからこそ風当たりの強い世の中でも生きる術を授けていきます。高度な暗殺技術を持っているのは、父親が伝授したからです。

アスペルガーでもクールじゃないか!

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主人公のクリスチャン・ウルフをどう思いますか。僕はかっこいいと思います。

計算能力が秀でていることもありますし、殺し屋としての暗殺技術も憧れます! 人殺しをしたいわけじゃないですが、そういう超人的なスキルには惹かれませんか?

ですが、クリスはなぜすごいのでしょうか

それは、アスペルガーであったことが大きいのではないでしょうか

  • アスペルガーだったからこそ、類まれな計算能力を持っていたのでしょう。
  • 人とコミュニケーションを取ることが苦手だったからこそ、一人でも生きていく術を身につけたのでしょう。

アスペルガーである自分を認め、それにあった方法で長所を伸ばし、短所を補ったからこそ、僕たちが「クール」だと思うクリスチャン・ウルフの姿があるんだと思います

アスペルガーはただ人と違うだけ

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僕は、この映画のメッセージはこれに尽きるのではないかと思っています。

映画の終盤でも、「アスペルガーはただ人と違うだけ。その人と向き合って理解して、その人にあった方法で得意な部分を伸ばしていけばいい」という内容の語りも入ります。

主人公は「普通」の人でも憧れるキャラクターとして描かれています。
しかも「普通」の人が気づかないところでその才能を発揮して、世の中を動かしていたのです。

そんな「かっこいい」キャラクターが、これまでマイナスイメージを持っていた(かもしれない)アスペルガーだったなんて、ということになれば、アスペルガーに対する認識を考え直すきっかけになります。

きっとこの揺さぶりを狙った映画なんじゃないかなと思っています

僕も、頭ではわかっていても、アスペルガーって劣っているという印象があったかもしれません。でも、実は全然そんなこと無い。むしろ「普通」だと思っている自分なんかよりすごいのかもしれません。

そうすると、どのような結論になるのでしょうか。やっぱり、人によって得手・不得手が違うように、アスペルガーの人もその違いにすぎないということになるのではないでしょうか。アスペルガーというだけで、その人の良さを見つけるのを止めてしまうのはおかしいことなのでしょう。

自分の周りに引きつけて考えてみる  

さて、自分の周りに引きつけて考えてみるとどうでしょう**。すると途端に難しいことのような気がしてきました**。

僕はちょっと自分と合わなそうと思うと、遠ざける傾向があると思います。

このアスペルガーの主人公の才能に気付けなかった母親のように、いろいろなものを見落としてしまうなと思いました。そして、その人を傷つけてしまうこともあるのかもしれません。

もう少し、人のことを決めつけないで向き合ってみるということが大事なのかもしれません。自戒を込めて

「あなたも実は身の回りの隠れた才能を見落としているかもしれませんよ!」という伏線回収も実は映画内にあるので、気になる方はぜひ見てみてください!

まとめ

『ザ・コンサルタント』の観る前と後での発見について簡単に書きました。

でも、これは映画のメッセージを僕なりに解釈して一部を紹介しました。

不正を働く組織との攻防や主人公の過去など、ここには書いていない多くの内容がありますが、そのすべてはこのメッセージに集約されていきます。

これを書いていて、もう一度この映画を見直したくなりました。おわり。

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