こんにちは、建築士のあすかです。
先日、北九州市の小倉を散歩して来ました。
その時に、北九州市中央図書館に立ち寄ったので、今回はこの建築物について解説していきます。
建物概要
- 所在地:福岡県北九州市小倉北区城内4-1
- 構造:鉄筋コンクリート及びPC造、地上2階・地下2階建
- 延面積:4,502㎡(こども図書館 2,000㎡)
- 蔵書数:489,418冊(平成30年4月時点)
- 竣工年:1975年
2019年、プリツカー賞(建築界のノーベル賞)受賞で話題になった建築家の磯崎新さんが設計した事で有名な図書館です。竣工してから何度か改修を行っているようですが、改修も磯崎さんの設計事務所にて計画されているようです。
PCとは
構造のところで専門用語が出てきたので少し解説しておきます。 プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)の略で、つまりあらかじめ緊張材を入れて圧縮応力を与えられたコンクリートという事です。 コンクリートは圧縮される力には強いですが引っ張られる力には弱いという性質があります。
コンクリートに緊張材を加える事で、荷重がかかっても引っ張られる側にひび割れが生じにくい構造にする事ができるのです。
PC造は橋(PC橋)によく使われている構造です。
建物の雰囲気
外観はコンクリート打ちっぱなしの壁面とガラスのカーテンウォールになっている壁面があり、屋根は青緑色の銅板でアクセントカラーになっています。
私が図書館を覗いたのは日曜日の昼頃で、子供図書館には小学生から中学生くらいまでの子供たちがいて静かに本を読んだり、勉強したりしていました。
子供図書館と中央図書館は緩やかなスロープで繋がっていて、中央図書館の方は天井が高くドームのようになっていて(後ほど紹介します)広々とした室内でした。
カフェが併設されていて、価格帯も低めに設定されていたので学生でも利用しやすくちょっと休憩したい時にぴったりだと思います。
見るべきポイント
なんといっても特徴的なのはこの見た目ですよね。 半円の屋根と2本のチューブのような不思議な形をした建物の間にスロープが挟まっています。 建物の線自体はマリリン・モンローのボディラインをなぞったものなのだそうです。 どうなぞったのかは私にも分かりませんが・・・。
この半円形の屋根は建築の用語でヴォールトと呼ばれるもので、アーチの発展形になります。 アーチは西洋で発展した構造で、西洋では組積造が多く使われていました。
組積造で開口を作ろうとすると下の絵のように石を組むことになります。
このアーチを並べたのがヴォールトで、回転させたのがドームです。これにより、組積造で大空間を作ることが可能になりました。
アーチが物理的に成り立つのであれば、それを並べても回転させても成り立つだろうと昔の人は考えたわけです。
さらに、それが成り立つのであればと古代ローマの建築家たちが発展させた形がまたまだありますが、ここではこれくらいにしておきます。
このヴォールトという構造を概要の部分で説明したPC造と組み合わせて使っているというところが、この図書館の大きなポイントになります。
ここからはすこしマニアックになりますが、実際に作っている人目線だと気になるのが素材と素材が隣り合う部分。例えばこんなところとか。
誰もが見慣れている例を出すなら、戸建ての住宅を想像してみてください。普通は屋根の方が壁より出ていますよね?これは、防水の点でそうした方が良いからです。
でもこの図書館では壁の方が出ています。このことに気づいてしまうと、内側はどうなっているんだろう?どんなふうに防水処理してあるんだろう?と楽しくなってきてしまうんです。
如何でしたか? 少しでもその建物についての知識をもって実物を見に行ってみると、いつもとは違う味方ができて楽しくなるのではないでしょうか?